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大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)7970号・昭55年(ワ)943号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

靴は、通産大臣から輸入割当を受けたものしか輸入ができないところ、原告Xは、イタリヤから靴を輸入しようとしたが、通産大臣から輸入割当を受けた業者でなかつたところから、被告Yにその輸入方を依頼し、被告Yが靴の輸入業者Aに依頼してイタリヤから靴を輸入した。しかし、イタリヤの業者等の手違いから靴の輸入が遅れたので、原告Xは、その受領を拒否して、被告Yに損害賠償等を請求した。原告Xは、被告Yに靴の輸入を依頼するに際し、原被告間に靴の売買契約が成立したと主張したが、本判決は、原告X主張の売買契約の成立を認めず、単に靴の輸入代行契約が成立したに過ぎないとして、原告Xの請求を棄却した。商品を輸入するに際して締結された契約の認定について参考になろう。

【判旨】

原告は、昭和五四年七月一七日、被告から本件各靴を、代金はその輸入時のFOB価格の三五パーセント増の金額に航空運賃その他の金額を加えた額とする旨の約定で買受ける旨の売買契約を締結したと主張しているが、右原告の主張事実に副う原告本人尋問の結果はたやすく信用できず、他に右原告の主張事実を認め得る証拠はない。

かえつて<証拠>によれば、次の事実が認められる。

(一) 靴は、皮靴製品として輸入割当品目とされており、通産大臣の輸入割当を受けた者しか輸入できないこと(輸入割当制度)になつていた(輸入貿易管理令三条、九条参照)うえ、売主である外国の靴製造業者は、信用状(日本の銀行が代金の支払を保証する旨のもの)が発布されることを売買契約締結の条件としていること、

(二) 輸入割当の有していない輸入業者が靴の輸入を希望する場合には、右枠を有する輸入業者に輸入手続の代行を依頼するのがその通例であること、

(三) 原告は、服飾雑貨の売買を業とするものであつて、右靴の輸入割当の枠を有していなかつたので、昭和五四年四月初め頃、繊維製品及び用品雑貨の売買、直輸入等を業とする被告の従業員である訴外落合英夫との話合いにより、被告を通じて靴をイタリヤから輸入しようと考え、右落合の知人である訴外ビクトリオ・ポロと一緒に、イタリアの訴外メデイチ社を訪れ、同社で各種の靴を見たうえ、これを購入することにして、その購入予定商品及びその数量(この時は三四一対より若干多かつた)を決め、同社に対し被告宛に見本商品を送付するよう依頼したこと、

(四) その後、昭和五四年六月下旬頃ないし七月上旬頃、前記メデイチ社から被告宛に、見本の靴三対が送付されてきたが、その頃原告は、再び右メデイチ社に赴き、各種の靴を検討のうえ、最終的に別紙目録記載の右メデイチ社製婦人用靴三四一対(本件各靴)を購入しようと決意し、その値段や、飛行機による船積の時期もすべて原告がメデイチ社と交渉して決めたのであつて、被告は、その交渉には全く関与していないこと、そして、本件各靴の船積の時期も、原告は当初同年七月末としてその旨メデイチ社に申し入れていたが、それまでに本件各靴の製造ができないところから、原告とメデイチ社との話合により、最終的に遅くとも同年九月一五日と定められたこと、

(五) 次に、原告は、昭和五四年七月一七日、被告に対し、正式に本件各靴の輸入手続の代行を依頼した結果、右同日、原告と被告との間において、被告が本件各靴の輸入手続をすることとし、これに対し、原告は、被告に対し、本件各靴の輸入時のFOB(本船渡し)価格(以下靴価格という)、輸入割当枠貸付手数料(右靴価格の二五パーセント)、航空運賃及び輸入関税等諸費用を支払う外、輸入代行手数料との名目で、靴価格の一〇パーセントの金員を支払う旨の輸入代行契約が締結されたこと、なお、右手数料及び費用のうち、靴価格の半分と輸入割当枠貸付手数料については現金前払とし、残金は約束手形で支払う約定であつたこと、

(六) ところで、当時被告自身も外国から靴を輸入したことはなく、かつ、本件各靴の輸入割当の枠を有していなかつたので、被告は、さらに、訴外伏川商事株式会社を介して、訴外株式会社ファミリア(ファミリア)から同会社の有する右輸入枠を借用し、同社発行依頼の信用状の発付を受け、また、本件各靴の注文書等必要書類を作成するなどして、原告に代り、原告のために本件各靴の輸入手続を代行したところ、右信用状等の必要書類を作成するに当つては、前記の通り、ファミリアの有する靴輸入の枠を借用して本件各靴を輸入することになつたところから、その書面上の本件各靴の買主は、形式的には右ファミリアとされたけれども、本件各靴の品名、数量、代金、飛行機による船積の時期等は、すべてさきに原告がメデイチ社と取り決めた内容をそのまま記載するなどして作成されたこと、

(七) なお、被告は、これまでに靴を輸入して売却するなどの商取引をしたことはないし、また、訴外伏川商事株式会社もファミリアも、その計算において本件各靴をメデイチ社から買受けてこれを被告ないし原告に売却する意思はなかつたこと、

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そして、以上の事実に照らすと、原告は、被告との間で、昭和五四年七月一七日、原告主張のような売買契約を締結したことはなく、かえつて、原告がイタリアのメデイチ社と事実上取り決めた本件各靴の購入条件に従い、被告が原告に代つて本件各靴をイタリヤから輸入する手続を行ういわゆる輸入代行契約を締結したものと認めるのが相当である。

もつとも、原告は、本件各靴を輸入するについての信用状その他各書類上の買主はファミリアとなつており、メデイチ社の債務不履行に対しクレームをつけたり、代金の支払を拒絶できるのもフアミサアであることその他種々の理由をあげて本件各靴は、原告が被告から買受けたものであると主張しているところ、本件各靴を輸入するについての信用状その他書類上の買主がフアミリアとなつていることは前記認定の通りである。しかしながら、前記認定の通り、本件各靴を輸入するについての手続上の制約から信用状その他の書類には、訴外伏川商事株式会社を介して被告の依頼を受けたファミリアが便宜形式的にその買主となつたのに過ぎないのであつて、右フアミリアは、メデイチ社との関係で売主としての権利義務があるに過ぎないこと、また、本件各靴を購入するについて、その品名、数量、船積時期等をメデイチ社と交渉して決定したのはすべて原告であつて、被告やフアミリアではないこと、被告はこれまでに靴を輸入して売却する等の商取引をしたことはなく、また、訴外伏川商事株式会社ないしフアミリアは、本件各靴を自己の計算においてこれを買受けて輸入する意思はなかつたこと、等の諸事情に、前段冒頭に掲記の各証拠を照らして考えると、前述の通り、被告は、原告に対し、本件各靴を売渡したものではなく、単に原告から本件各靴の輸入代行事務を依頼されたに過ぎないものと認めるのが相当である。

よつて、原告と被告との間に本件各靴の売買契約が締結されたとして、右売買契約に基づく原告の第一次請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

(後藤勇 草深重明 小泉博嗣)

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